CEO・社長クラスの案件を扱うエージェントに「いま、いい話はありますか」と聞いて、その場で良い答えが返ってくることはほとんどありません。担当者が怠けているからではなく、社長の席は求人として先に存在していないからです。

この層の案件は、株主の側が動いたときに初めて作られます。そして作られてから決まるまでが速い。だから候補者側の打ち手は「探してもらう」ではなく、案件が発生した瞬間に、3人程度の候補者リストの1人として名前が挙がる状態を先に作っておくことになります。

この記事では、そのために何をするかを具体的に書きます。エージェントの見分け方、初回面談で自分から渡すもの、複数社に登録するときに自分で敷いておくルールの3つです。

社長の席は、どこから生まれるか

CEOのポジションが発生する震源地は、だいたい次の3つです。

  1. PEファンドが投資先の経営体制を組むとき。 買収と同時に社長を置く、あるいは数年たって次の局面に合う人に替える
  2. 事業承継で、オーナーが外部から経営者を迎えるとき。 社内に後継者がいない、または今はまだ渡せない
  3. 上場企業で、指名委員会が後継者計画を動かすとき

この3つに共通しているのは、公開できないことです。社長を探していると表に出た時点で、取引先・銀行・社員・競合に伝わり、現職の社長の立場も壊れます。だから求人サイトには出ません。

※エグゼクティブサーチとは: 求人を公開して応募を待つのではなく、依頼を受けてから対象者を特定し、個別に接触していく採用の進め方です。着手金を受け取って探索から関わる形(リテーナー型)が中心で、決まったときだけ手数料が出る紹介とは仕事の構造が違います。

ここを押さえると、「CEO エージェント」で見つけた会社に登録しても何も起きない理由が分かります。あなたの経歴に問題があるのではなく、その会社が社長の席を依頼される立場にいないことがあるのです。この構造はプロ経営者の求人はどこで動いているかとヘッドハンティング会社に管理職として登録しても動かない理由にも書きました。

見分けるための4つの質問

会社の名前や規模では判断できません。初回の面談で、こちらから聞いてしまうのが早いです。

1. 「この案件の依頼元は誰ですか。ファンドですか、オーナーですか、指名委員会ですか」

答えられないなら、その案件は孫請けで回ってきたものです。孫請けが悪いのではありませんが、依頼元に直接会えない担当者は、要件の背景を説明できず、あなたの推薦理由も作れません。

2. 「この席は、なぜ今空いたのですか」

社長の席が空く理由は、前任の退任、投資の局面の変化、業績の悪化、承継のどれかです。ここを言葉にできる担当者は、依頼元と要件を一緒に作っています。「詳しくは面談で」としか返ってこない場合、要件を預かっているだけの可能性があります。

3. 「初回面談で、すぐに紹介できる案件はありますか」

逆説的ですが、その場でいくつも案件が出てくることは、良い兆候とは限りません。 あなたを見る前に用意されていた案件、つまりあなた向けに組まれていない案件です。この層では「いま出せる案件はありません。ただ、半年以内に動く領域はこうです」という答えのほうが誠実です。

4. 「見送りになったとき、理由をどこまで戻してもらえますか」

ここがいちばん差が出ます。「社風が合わないとのことでした」で終わる担当者からは、次に向けた改善材料が何も得られません。どの発言で、どの懸念を持たれたのかを戻せる人は、選考に立ち会っています。

初回面談で、自分から渡すもの

職務経歴書を網羅的に書き直す必要はありません。この層で読まれているのは、担った組織の大きさではなく何を決めたかです。渡すものを3つに絞ります。

  • 決めたことのリスト。 いくらの投資を決めたか、どの事業をやめたか、誰を入れ替えたか。金額と時期を添える。決めた結果が失敗だったものも入れる(失敗の自己評価が言える人は、株主から見て扱いやすい)
  • 数字の責任範囲。 売上の責任か、利益の責任か、資本効率まで見ていたのか。ここを曖昧にすると、実際より小さく読まれます
  • 受けない条件。 地域、業種、株主の性格、報酬の下限、常勤か非常勤か。先に出しておく

3つめを嫌がる方がいますが、受けない条件を言える人のほうが、案件発生時に声をかけやすいのです。条件が分かっていれば、担当者は依頼元に「この人なら動きます」と言えます。何でも検討しますという返事は、裏を返せばどれも断られるかもしれないという意味になり、3人のリストに入れにくくなります。

関連して、エージェント側が実際に何をしているかはプロ経営者の転職エージェントは何をするのかに、「印象が悪くなったのでは」という不安については転職エージェントのブラックリストは存在しないに整理しています。

複数社に登録するなら、自分でルールを敷く

複数のエージェントと付き合うのは悪いことではありません。震源地が3つあるので、1社だけでは全部をカバーできないからです。

ただし、ひとつだけ事故が起きます。同じ会社に、2社から同時にあなたの名前が出ることです。業界では重複推薦と呼ばれます。依頼元から見れば、誰を窓口に話せばいいのか分からず、手数料の争いにも巻き込まれます。もっとも困るのは、それが候補者の評価として跳ね返ることです。

防ぎ方は単純で、こちらからルールにしてしまいます。

  • 「どの会社に出す前にも、社名を私に確認してください」と最初に言う。 これを断る担当者とは組まない
  • 出した先を自分で記録しておく。 会社名と日付だけのメモで十分です
  • 同じ案件が2社から来たら、先に話を持ってきた側に揃えると決めておく

この一手間を最初にやっておくと、後から「どちら経由ですか」という気まずい確認をせずに済みます。

評価すべきは、案件がない期間の扱われ方

エージェントを「案件の自動販売機」として評価すると、この層では必ず外します。案件は不定期にしか発生しないので、付き合いは半年、長ければ数年単位になります。見るべきは、案件がない期間にどう扱われるかです。

年に1回でもいいので、自分から状況を更新しておくことをおすすめします。決めたことが増えたら、その1行を送る。それだけで、次に席が発生したときに思い出される順番が変わります。逆に、連絡が途切れたまま数年たった名前は、どのデータベースに入っていても最初の3人には入りません。

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